HIGEの独り言
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「先輩、津軽ではどんなに貧しくても、たくあんを煮て食べるなんてことはしませんよ!」
子供の頃、故郷ではどこの家でも、たくあんを漬けていたものだ。干して皺皺になった大根を、糠と塩そして唐辛子を入れて漬ける。わが家では、結構大きな木の樽に漬けた。家族で1年以上にわたって食べるのに十分な量だ。
翌年、またたくあん漬けをする頃には、樽の底の方にはまだ沢庵が残っている。発酵が進み若干酸っぱくなっているものもある。酸っぱいのはそれはそれでうまい。細かく刻んでご飯にまぶしおにぎりにしても良いし、焼き飯の具にしても良い。薄く切ったたくあんになんばんの粉をかけても良いし、生姜を細く刻んでまぶし醤油を少しかけるのも良い。
さてたくあんの煮物。作り方を母親に聞いた。たくあんを取り出し水で洗って糠をおとし、輪切りにする。塩抜きの意味でそれを一度水から煮てさっと沸騰させるのがコツ。それを取り出しあらためて水から煮る。ダシは煮干し。酒粕となんばんを入れる。塩気が少なければ味噌や醤油を足す。それは好みだがわが家は味噌だそうだ。
皺皺で細くなっていたたくあんが、煮上がるころは元の大根の大きさに戻る。大根の薄切りの煮物は、荷崩れすることが多いが、これはそんなことがなく、むしろ生のものより。食感はしっかりしていたように記憶している。煮ている最中や鍋のふたをとると、たくあん独特の日本人が好むにおいが周りに漂う。これが食欲をそそるのだ。一寸しょっぱめだが、なんばんのピリッとした辛味と煮干しだしと酒粕によって口当たりの良い味となったたくあんの煮物は、熱いご飯に本当によく合う。これはあったかくても、冷えても良い。弁当のおかずに入っていたこともあるような記憶がある。あったとすれば私のリクエストだったのだろう。それほど好きだった。
たくあんだけでなく白菜の漬物も同じようにして食べる。白菜が柔らかくなり過ぎないようにするのがコツだそうだ。なぜ、こんなものがうまいのか。それはきっと糠の所為だろう。たくあんも白菜も糠でつける。だから糠漬けの漬物はうまい。古漬けになったそれを煮るのだから当然うまい筈、と自分では納得している。
津軽地方も漬物は沢山漬けるそうだが、煮て食べることはなかったと後輩は言った。古くなった物は捨てるそうだ。もったいないことをしてとその時思ったことだった。
「母ちゃん、たっかん大根の炊いたが食べたいけど。あれホンマにまいがいね。」「ほんでももうたっかんなんか家で漬けておらんがいね。」
全国各地の様々な漬物や即席の漬物が簡単に手に入るようになって、減塩で健康志向が高まり漬物もコメを食べることも少なくなったこの頃、自分の家でたくあんの糠漬けを作ることもなくなってしまった。そして懐かしいたくあんの煮物も食べることももう無い。残念なことだ。
1. 無題