HIGEの独り言
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だいぶん前の話だ。昼食時、誰かが自分の畑で栽培したきゅうりを差し入れてくれた。皆、子供の頃、夏、腹がへると畑からきゅうりをもいで食べてという共通体験を持っている。そこできゅうりに何をつけたかということ話題となった。塩と味噌が半々。塩は竹の皮に包んでつけたらしい(あるいは、きゅうりを食べ、塩をちゅうちゅう吸った)。私は梅干しというと、皆が「ええっ」のリアクションだ。梅干しの壺に手を突っ込むと、指でころあいの梅干しが2つ3つとれる。それをかじったきゅうりの表面に塗って食べるのである。きゅうりはいくらでもある。梅干しがなくなるまでおかわり自由だった。が、梅干しをつけるのは少数派だった。あとから顔を出した若い子が、マヨネーズと言ってこの話は終わった。
ずっと後になって高崎の友人が、私の家のは梅干しでなく、梅漬けだと言った。彼の家の梅干しは、乾燥した後、梅酢に戻さない。それがホンマ物だと。それじゃ梅酢はどうすると訊くと、捨てるという。それはもったいない、だから、家の梅酢できゅうりや大根を1~2時間浸しておいたものをもごちそうした。当然のことながら酒のあてに気にいってくれた。
母親は、梅干しづくりの名手だと思っている。紫蘇を使った昔からある梅干しだ。塩分濃め(20%)だが、色は本当にきれいな赤色だ。赤い着色料を使ったのかと見間違うくらいに。だが全然違う。弁当箱の白いご飯の真ん中に梅干しを置いた日の丸弁当。母の梅干しは日の丸の「白地に赤く」の旗そのもので私にはそれが自慢だった。ご飯と梅干しだけ充分。これこそ日本のめしの原点だと思う。
母の梅干しづくり。「青い梅に風呂敷なんかかけて3日ほど置いて少し柔らかくなったら、綺麗に水洗いし、水気をとって、塩で漬けるんや。2日か3日で水があがってきたら、梅を一旦取り出しておく。そいで摘んできた紫蘇の葉を塩で揉むんや。最初は青い汁が出てくるさかい、よく絞ってその汁をほうるんやよ。また塩でよく揉み出てくる汁を捨てる。これを何回か繰り返すんや、そうせんと梅干しは綺麗な赤にならん。これでいいと思うたら固く絞った紫蘇を梅を漬けとった塩水に一旦入れて塩水を赤くしたら、紫蘇を取出し、梅を入れ、その上から紫蘇を被せるように置くんや」。「おまんなぁ、干しといた梅を夜露にかけるとかいっとたんがおぼえとるけど」。「そうや、3日ほどお日様に干いては梅酢に戻すんや、4日目は夜8時ごろまで外において夜露をかけてから梅酢に戻して、次の日はそのままにして、その次の日にもう一度夜露をとるんや。ホンマは一晩中というけど、雨が降ったらこまっさかい、オラは大抵2回したわ」。「何で夜露なんや」。「そうすると梅干しの皮がやらこうなるからや」。私は長いこと夜露に晒すことで梅干しが綺麗な赤に染まると思っていたが、夜露に晒すと逆に色が悪くなるとのことだった。まぁ、経験がもの言う加減があるのだろう。
皮をむいて一旦塩であら漬けした生姜を、別に取り出した梅酢につけた「紅生姜」。これもまたご飯と本当に相性がいい。サイコロ切りしてご飯に混ぜたおにぎりは本当にうまい。梅酢は捨てたらだちゃかんのや。